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あかね実践経営ゼミ|ファクトベース・コンサルティングについて

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第1回.ファクトベース・コンサルティング

第1回:ファクトベース・コンサルティングについて

2023/01/11

中小企業診断士 T先生

記念すべき一回目のテーマは『ファクトベース・コンサルティング』です。

皆さん聞かれた事はありますか?

プロコン志望の洋一くん

正直、初めて聞きました。

ファクト(事実)ベースなので、物事を事実で捉えるっていう事なのかな?

プロコン志望の遥さん

私は聞いたことがあるだけで、詳しい事は分かりません。

確か、世界的なコンサルティングファームのマッキンゼー社が提唱したコンサルティングの手法だったと思います。

中小企業診断士 T先生

その通りです。

ファクト(fact:事実)ベース(base:基盤)なので、事実に基づいた思考法(またはコンサルティング手法)と言えます。

コンサルティング会社として世界のトップに位置するマッキンゼー社が提唱した考え方で、今では世界中のビジネスシーンで取り入れられています。経営状況を出来る限り客観的な数値やデータとして捉え、意思決定の判断材料にするものです。

日本でも大企業を中心に浸透していますが、大企業の末端部門や中小企業の現場には十分浸透しているとは言えないのが現状です。

中小企業診断士 T先生

因みに、それまでは「グレイヘア(白髪)コンサルティング」と言って、年齢的・経験的に成熟したベテランのコンサルタントが自身のノウハウや知見を基にアドバイスを行うのが主流でした。

しかし、この『ファクトベース・コンサルティング』によって、経営理論を熟知した若年者であっても、正しい現状認識や意思決定のアドバイスが可能となり、大きな成果を収める事ができるようになりました。

プロコン志望の洋一くん

なるほど!
まさに僕達のような駆け出しのコンサルタントには打って付けの手法ですね。

中小企業診断士 T先生

そうですね。しかし若年者にとってだけ有効な手法という訳でもないです。

昔の様に、経営環境が安定的で、殆どの企業が右肩上がりに成長していた時代では、ある程度業界を熟知していれば一定の勝ちパターンが見えてくることもあって『グレイヘア・コンサルティング』が有効だったのかと思いますが、今の時代の様に、数年先も読めないくらい経営環境の変化が激しく、不確実性や曖昧性が高まっている中では、ベテランコンサルタントであってもファクトベース思考を取り入れなければ、適確な状況判断が難しくなっています

プロコン志望の遥さん

なるほど、よく分かりました!
「ファクトベース」は、今の時代のコンサルティングや経営の現場でも、基礎となる重要な思考法って訳ですね!

中小企業診断士 T先生

ではここで、「中小企業」にとってファクトベース思考はどのような意味があると思いますか?

プロコン志望の洋一くん

うーーん、一概に言うのは難しいですね。
僕が以前勤めていた会社(化学品の製造・販売業)では、顧客別の販売データや生産に関するデータを自動集計していましたが、でもそれは決算の為の実績データを集める事が目的だったので、事実を基に何かを生みだす事は出来ていなかったと思います。

なので、もしそういうビックデータから有用なデータを抽出して分析し、現場レベルの意思決定に役立てる事ができれば高い成果を生み出せるのかも知れません。

プロコン志望の遥さん

私は大企業の子会社で社長秘書をしていましたが、会社全体の風土として「勘に頼る」部分が多かったと思います。
部門の末端に行くほど専門性は高まるけれど、現場の数値化・データ化は進んでいなくて、部門長の現状判断や「勘」に頼る事が多くなるというジレンマがありました。

もし、この現場の状態を専門外の人にも客観的に正しく数値で把握できるなら、もっとコミュニケーションが促進されて全体最適化が図られるのに・・と、いつも思っていました。

中小企業診断士 T先生

皆さん、なかなか良い指摘だと思います。

洋一くんの言うように、中小企業と言っても様々ですが、多くの企業では数値やデータと言うと「経営の意思決定を助ける」という目的では管理されていなくて、「毎月の営業成績の確認」や「正しく決算書を作成し税金支払いの準備をする」という目的で管理している会社が大半を占めています。

また、遥さんの言うように、「勘」に頼る経営者の方も多いのが実情だと思います。出来れば「データを収集・分析して経営成績をアップさせたい」と皆さん考えてはおられますが、人員や時間が不足していたり、「実際、どこから手を付けてどのように管理すれば良いの分からない」というノウハウの部分がネックになっているケースが多くあります。

中小企業診断士 T先生

また、「我が社では数値管理はしっかりできている」と認識している会社でも、実際は「製造原価報告書」を作成する為に各費用を積み上げただけのものであったり、そもそも「売上原価項目」と「販管費項目」が混在していて全く役に立たないばかりか、判断ミスを引き起こすだけの危険な管理をされている会社も驚くほど多いのが現状です。

プロコン志望の遥さん

確かにそれが事実ならちょっと怖いですね。

「決算報告書」は、金融機関など社外への業績の報告と、正しく税金を申告するという目的で作られるので、「ファクトベースで経営の状況を客観的に捉える」という事とは、本質的に全く違うと思います

中小企業診断士 T先生

その通りです。鋭い指摘ですね。

会計制度には、①「過去の業績を外部に公表するための財務会計」と②「正しく税金を納めるための税務会計」、そして③「経営の意思決定に役立ち未来の利益を生み出すための管理会計」がありますが、この「ファクトベース・コンサルティング」は③へと通ずる思考法になります。
※この「管理会計」については改めてテーマにしたいと思っているのでどうぞご期待下さい

中小企業診断士 T先生

ここで重要な点は、「勘に頼る経営」から脱却すると組織が変わる、という事です。

経営者の頭の中で「これは間違いなく正しいだろう」という確信があっても、それがいくら本当に正しくとも、社内の人達はそれに向かって全力疾走する事にはためらいが生まれます

役員会がある企業であれば、説得力がないというだけで貴重な機会を逃したり、無駄な資源投入を引き起こす事にもなりかねません。

ファクトベース思考は、組織全体で正しく現状把握を行う為の基盤であると同時に、共通認識を深める事で意思疎通を促進させ、組織的な全体最適化を図るためにも非常に有効に機能します。

プロコン志望の洋一くん

なるほど~~・・本当によくわかりました。

『ファクトベース・コンサルティング』は、「単に電卓を叩いて理論的・機械的に数字を操作して利益を捻りだす」、というものでなくて、『これまでの組織風土を見直し、組織全体の習熟度を高め、皆で一段高いレベルへ進んで行こう!』という全体最適化を図る為の思考法だった訳ですね!!

 T先生、どうもありがとうございました!

【出典】
ハーバード・ビジネス・レビュー (ダイヤモンド社)
マッキンゼー経営の本質(ダイヤモンド社)
マッキンゼー勝ち続ける組織の10の法則(マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパン)

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