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あかね実践経営ゼミ|パーパスについて考える【前編】

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第2回.パーパスについて考える【前編】

~経営理念やSDGsとはどう違うの?~

第2回:パーパスについて考える【前編】~経営理念やSDGsとはどう違うの?~

2023/01/20

中小企業診断士 T先生

今回のテーマは『パーパスについて考える』です。

皆さん『パーパス経営』というキーワードは聞かれた事はありますか?

プロコン志望の洋一くん

はい、最近新聞などでよく見かけるようになりました。

持続可能性に配慮した経営思想というイメージを持っていますが、正直、SDGsやESG等とどう違うのか良く分かりません。

プロコン志望の遥さん

私も、漠然としたイメージがあるだけです。

パーパスは企業全体の重要な「目的」であると理解していますが、「経営理念」や「ミッション」「ビジョン」等との区別が付いていません。

中小企業診断士 T先生

まず『パーパス経営』というキーワードが注目を浴びるようになった背景をお話しします。

2019年の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で、ビジネス・ラウンドテーブルという共同声明が発表されました。
ここでは、従来型の経営で最重視されていた「株主資本主義」から脱却し、あらゆるステークホルダーに配慮した「パーパス経営」を実践することの重要性が打ち出され、apple社のCEOやAmazon社のCEOを始めとした世界を代表する186名の経営者がこの宣言に賛同しています。

プロコン志望の洋一くん

うーん、スケールが大きくて何か難しく聞こえますが、つまり世界中の経営者がいよいよ本腰をいれて、「人や社会や地球環境にとって貢献する経営」にシフトしていく事になった訳ですね?

中小企業診断士 T先生

その通りです。

しかも、これはSDGsの様に2030年に賞味期限がやってくる期間限定のものでも、ESGの様に投資テーマとして扱われる一過性のバズワードでもありません。

10年先、いや30年以上先までの期間をかけて実現していく、真に「持続可能な社会づくりと自社の存続と調和」を目的とする経営思想です。もっと砕いて言うと、「本当に社会全体に貢献する事業を行い、持続可能な社会を皆で実現しよう」となるかと思います。

プロコン志望の遥さん

なるほど!
「株主第一主義」は目先の業績ばかりに注意がいく「短期利益志向」に繋がり易く、社会全体で見た時に軋轢や弊害ばかりを生むように思います。
そうではなく『パーパス経営』は、長期的で社会全体的な視点に立って真剣に社会に貢献し調和を図っていくという、極めて現実的な経営思想のように聞こえました!

中小企業診断士 T先生

鋭い指摘です。しっかりと行間が読めてますね。

プロコン志望の遥さん

ありがとうございます!

でも私にはまだ、「経営理念」や「ミッション」「ビジョン」等との違いがよく分かりません。
もちろん意味は調べましたが、腑に落ちない事ばかりでした。

中小企業診断士 T先生

まずはそれぞれの概念が何であるかを確認しましょう。

「経営理念」という言葉は「俗に、事業・計画などの根底にある根本的な考え方(広辞苑より)」とあるので、日常的には俗語として使われています。現在では事業承継の際に、先代の経営思想を代々受け継いでいるという会社の方が多いかも知れませんね。
※因みに、理念の本来の意味はプラトンからカントを経由した哲学用語であって、20世紀になってから桑木厳翼がIdeeを「理性概念」と和訳した事から「理念」という言葉が生まれています。

「ミッション」や「ビジョン」は、日本でも有名なピーター・ドラッカーが提唱した経営思想です。ドラッカーは、「経営理念が社長の想いならば、ミッションは会社が果たすその使命や具体的な目標であり、ビジョンは行動した結果や実現した状態である」としています。

プロコン志望の洋一くん

それは初めて知りました!今までまったく使い分けが出来ていなかったです。

そうならば、『パーパス』はどういう位置づけになるのでしょうか?
これだと経営理念が最上位に位置する概念の様に思います。

中小企業診断士 T先生

もちろん、明確な定義に基づいて広く使用されている訳ではないので、一概な事は言えません。

しかし、経営理念は前にも述べたように「創業者の想い」であるケースが殆どです。もし、「企業理念」というならば会社全体の哲学という事になるでしょうが、やはり日本では経営理念といって「創業者の想い」を「事業の根底にある根本的な考え方」と定めている企業が断然多いです。

さあ、このように前提条件を整理した時に果たして『パーパス経営』はどういう位置づけになるのか?

プロコン志望の洋一くん

うー--ん、これまでの話の流れから考えると・・・

ちょっと難しいですね(汗)

プロコン志望の遥さん

私もハッキリ分かりませんが、もしあるとすれば、①経営者(または創業者)の想いが社会全体に通じているかいないか、 ②経営者(または創業者)の想いが個人的なものか否か、でパーパスはそれを補う事になりますね。

中小企業診断士 T先生

良い論点だと思います。識者からは、

・一人称の経営理念(私の想い)
・三人称のパーパス(我々みんなの想い)
とも指摘されるように、「その語りべは誰か?」という視点は大変重要です。

例え目指すゴールや目的が同じであっても、「他人の想いの実現の為に自分の使命や目標が決まってくる」のか、「個人個人の心の内から湧き上がった想いから自分の使命や目標が決まってくる」のかで、個人のモチベーションも組織全体の一体感も大きく変わってくる事でしょう。

プロコン志望の洋一くん

はっ、なるほど!これでここまでが全てが繋がりました!

他の誰かの倫理や哲学」ではなく、「他の誰かに与えられた役割」でもない、個人個人が心の底から理解・納得・共感した想いを基に、皆が自律的に行動し、かつ組織が一体となって「自走」しながらビジョンという結果を追い求めていくという事ですね!!

中小企業診断士 T先生

洋一くんは要約が上手ですね。

ここまでを理解すると、従来型の経営の様に
「毎朝朝礼で従業員が良く意味が分からないまま、とにかく経営理念を暗唱する」
「他人の哲学や倫理を原理主義の様に体に染みつけるまで大声で叫びあう」

という事が、これまでの「一人称の思想」を発端として有効なアプローチであったが良く分かります。もっとも大量生産時代には行動規範と規律は非常に重要だったので、これまでの経済発展に寄与して来た事は言うまでもありません。

しかし、今の時代の「個人個人が本当に腹落ちする」というのは、「盲目的に信奉する」事とは全く違います

プロコン志望の遥さん

そこまで深い歴史的な経緯があった事を始めて理解出来ました。

『パーパス経営』と「経営理念」とでは、どちらが上か重要か?という議論はもうあまり意味が無いと思います。それぞれの意味を深く理解し、どう今後の経営の目的を考えるか?の方が遥かに重要ですね!

中小企業診断士 T先生

私もそう思います。

しかし実はまだ、『パーパス経営』の半分ほどしかお話ししていません。

あらゆるステークホルダーに配慮する、とは一体どういう事なのか?を考えないままでは、やはり一過性のバズワードの様にすぐに廃れてしまうでしょう。

次回は、この残りの点をテーマに対話を行いたいと思います。

プロコン志望の洋一くん

深いですね~~。まだ半分ですか。

次回も宜しくお願いします! T先生ありがとうございました!

【出典】
ハーバード・ビジネス・レビュー (ダイヤモンド社)
パーパス経営 名和高司著(東洋経済新報社)
BSG次の10年で勝つ経営 BCGグループ(日本経済新聞社)
経営者に贈る5つの質問 P.F.ドラッカー(ダイヤモンド社)
だから僕たちは組織を変えていける 斉藤徹(クロスメディア・パブリッシング)

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