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あかね実践経営ゼミ|パーパス経営について考える【後編】

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第3回:パーパス経営について考える【後編】

~あらゆるステークホルダーとの関わり~

第3回:パーパス経営について考える【後編】~あらゆるステークホルダーとの関わり~

2023/01/25

中小企業診断士 T先生

今回のテーマは前回に引き続き『パーパスについて考える』です。

皆さん、前回の内容は理解できたでしょうか?

プロコン志望の洋一くん

はい、最初はすごく難しく聞こえましたが、よくよく考えてみるとごく自然な考え方だと思いました。

プロコン志望の遥さん

私も同感です。
特に斬新な考え方という訳でもなく、「絵に描いた理想論」って訳でもないと思います。

「皆で社会を良くしようというテーマ」は経営の原点として古来からもあったと思いますし・・

中小企業診断士 T先生

その通りです。

日本でも昔から「三方よし」と言うように、『パーパス経営』の思想は事業活動の原点であるべきものです。

しかし何故、ここにきて再注目されているのか?

プロコン志望の遥さん

前回の話では、
現代のように行き過ぎた「株主資本主義」は、社会全体で見た時に「人や社会を蔑ろにするもの」に変貌した、という事だったと思います。

資本家が利益追求姿勢を強めた結果、地球環境が破壊され、富の格差が広がり、時間的・金銭的な搾取が横行したから、という事でしょうか?

中小企業診断士 T先生

もちろん、そういう指摘も多くあります。

しかし、資本主義は「拝金主義の象徴で諸悪の根源」とするのは誤った考えとなるので注意が必要です。

今日の資本主義の原型は、人々が「元々あった権威主義から脱却し自由と平等な社会に移行しようと模索する過程」で生まれたものです。

また、「株主資本主義」が暴走し利益追求マシーンと化してしまったのは、その根本思想にあるのではなく、むしろその肥大化してゆくシステムそのものにある、ともされています。

プロコン志望の洋一くん

その話なら聞いたことがあります。

「利益追求」が目的で肥大化した訳ではなくで、結果的に企業が安定的に存続していく為には肥大化せざるを得なかったのだと。

中小企業診断士 T先生

そういう事です。

経営を行う上で、短絡的に資本主義を目の敵にしてはいけませんし、かと言ってROIの最大化といったような「利益至上主義」を貫いたとしても、今後の経営は立ち行かなくなる事が多くなるでしょう。

プロコン志望の遥さん

大変良く分かりました。私も安直な考えに陥らないように注意します!

中小企業診断士 T先生

それでは、こうした経緯を踏まえて「あらゆるステークホルダーに配慮する」とは一体どういう事かを一緒に考えて行きましょう。

まず、ここでの「ステークホルダー」とは何を指すのでしょうか?

プロコン志望の洋一くん

日本語では「利害関係者」となりますから、ここでは、①顧客、②従業員、③関係業者、④地域や社会全体、⑤投資家、という事だと思います。

中小企業診断士 T先生

では、「株主第一主義」から脱却し、それらのステークホルダーに配慮した経営を実践する為にはどのような点に留意する必要がありますか?

プロコン志望の遥さん

まずは目指すべき具体的なパーパス(共通目的としてのゴール)を設定する事になると思いますが、①それを設定するまでと、②設定した後、によって留意点が多岐に渡ってくると思います。

①では、形だけのスローガンではなく「具体的で現実的で皆が本当にワクワクするもの」あるべきですし、②では、「額に飾って終わり」という事にならように、組織の末端までパーパスが浸透して組織全体で実践する必要があると思います。

プロコン志望の洋一くん

あとは、そのパーパスが「如何に社外のステークホルダーに受け入れられるか?」という点が大事になると思います。

そういう意味では、独自性があって魅力的なものであった方がいいのかも。

中小企業診断士 T先生

皆さん、良い論点だと思います。

パーパスは、組織の一人一人が高い貢献意欲を持って自律的に組織全体を牽引していくものです。

識者からは、
「独善的で独りよがりなパーパス」ではなく「本当に社外の人々に受け入れられ社会と調和するもの」
「ありきたりで曖昧な経営理念」
でなく「その会社にしか達成できない独自なパーパス」
「与えられた使命」
でなく「自分たちで見出す志」
となっている事が重要であると指摘されています。※「パーパス経営」 名和高司著より

この結果として、真に世の中に必要とされ、地域社会と一体となった持続可能性の高い経営を成し遂げるための道標が描かれます。

中小企業診断士 T先生

もっとも、これらはパーパス経営を考える上で重要な切り口になりますが、「理想論に過ぎない」という見方もあるかと思います。

もちろん、これを抑えただけではパーパス経営は実現できません。実務レベルで実践していくには、この他にも重要となる論点が多岐に渡っています。

特に、私のこれまでの実践経験の中では、組織全体と個人とを統合する為のノードとして、社員の「幸せ」や「成長」を有機的に働かせることが不可欠となっています。

また、これだけでパーパス経営は捉えきれません。ホラクラシー、インクルージョン、自己超越、インテグラル理論、自己組織化など様々な近代思想を通して高い視座に立ち、深く考える必要があります。

プロコン志望の洋一くん

まるで哲学の講義を聞いているようでした。

経営理論のテキストにはここまでの事は書いてありませんでしたし、一つ一つのキーワードここまで深く考えたのも初めてでした。

中小企業診断士 T先生

私は、中小企業が高いパフォーマンスを発揮し、かつ長期的な実績を上げようとするなら、このように経営の根幹から自社を見つめ直す事は決して回り道ではないと確信しています。

短期利益主義的な目先の生産性向上策などは、結局はイタチごっこのようなものなので、それだけでは決して長期的な持続優位の獲得、付加価値化、価格転嫁、脱下請け化等が実現する事は無いでしょう。

「真に強い中小企業」と転身するためにも、皆が高い意欲を発揮し、自分たちの幸せと成長を追求しながら、内外の人々との力を結集させる方向性を指し示す事は、経営実務のレベルにおいても必要不可欠です。

プロコン志望の遥さん

まだまだ、パーパス経営を分かったつもりになってはいけないと思いますが、物事を深く考える良い機会となりました。

今一度復習して、もっと私なりに勉強していきたいと思います!

【出典】
パーパス経営 名和高司著(東洋経済新報社)
だから僕たちは組織を変えていける 斉藤徹(クロスメディア・パブリッシング)
ティール組織 フレデリック・ラルー(英治出版)

BSG次の10年で勝つ経営 BCGグループ(日本経済新聞社)
哲学と宗教全史 出口治朗(ダイヤモンド社)
ヨーロッパ思想入門 岸田靖夫(岩波ジュニア新書)
マックス・ウェーバー「プロティスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(岩波文庫)
アダム・スミス「道徳感情論」(講談社学術文庫)
カール・マルクス「資本主義」と闘った社会思想家 佐々木隆治  (ちくま新書)

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